
結論:全部の面が違う数字で、しかも公平なサイコロがある
その名は「Go First Dice(ゴー・ファースト・ダイス)」。日本語にすると「先手決めサイコロ」です。12面のサイコロ4個のセットで、1から48までの数字が4個に12個ずつ振り分けられています。全部の面が別々の数字なので、何人で振っても同じ目は出ません。振り直しは、起きようがないのです。
ただ、「同じ目が出ない」だけなら、だれでも作れます。1〜12のサイコロと37〜48のサイコロを用意すれば、同じ目は出ません。でもそれでは、後のサイコロが必ず勝ちます。このサイコロのすごいところは、そこではありません。
どのサイコロを取っても、勝つ確率が同じなのです。4人で振っても、そのうち2人だけ、3人だけで振っても、みんな同じ確率。さらに、「だれが1位か」だけでなく、「1位・2位・3位・4位の並び方」24通りがすべて同じ確率で出るように、数字が配置されています。つまり4人がそれぞれ1個ずつ振れば、一発で全員の順番が公平に決まります。


「同じ目が出ない」より、「公平」のほうがずっと難しい
2個なら、手で作れます。たとえば A が「1・4・5・8・9・12」、B が「2・3・6・7・10・11」。同じ目は出ませんし、A が勝つ組み合わせも B が勝つ組み合わせも、36通りのうち18通りずつで、きれいに半々です。

3個でも、普通の6面サイコロで作れます。1から18までを「1・5・10・11・13・17」「2・6・8・9・14・18」「3・4・7・12・15・16」と分けると、3人のどの2人で振っても、3人で振っても、順番の出方が全部同じ確率になります(この記事を書くときに、全部の組み合わせを計算して確かめました)。
ところが4個になると6面では足りず、12面が必要になります。そして5個になると、難しさが一気に跳ね上がります。
5人目のサイコロには、15年かかった
このサイコロの話は、2010年ごろ、あるゲームの集まりで始まったそうです。ボードゲームデザイナーのジェームズ・アーネストが、パズル作家のエリック・ハーシュバーガーに「何人で遊んでも、振り直しなしで公平に先手を決められるサイコロは作れないか」と相談しました。
3個(6面)と4個(12面)の答えは、数学者のロバート・フォードが2010年に見つけました。4個のほうは手計算だったそうです。2012年にはハーシュバーガーがこの4個セットを発表し、実際に売り出されて、ボードゲーム好きの間で知られるようになりました。
問題は5個でした。長いあいだ「順位の出方まで完全に公平な5個セット」は見つからず、ハーシュバーガー自身も36面・48面・48面・54面・20面という面の数がばらばらのセットでようやく条件を満たす、というところまででした。そして2023年、カナダのソフトウェアエンジニア、ポール・マイヤーが60面のサイコロ5個で完全に公平なセットを発見します。最初の相談から、およそ15年。この「世界一公平なサイコロ」の話は、2026年9月にも海外の科学ニュースで取り上げられています。
ちなみに、5個セットで面の数を最小いくつまで減らせるかは、今も分かっていません。「先手を決める」というささいな目的のために、まだ解けていない数学の問題がぶら下がっているのです。
ちなみに余談
3人用なら、自分で作れます。家にある6面サイコロ3個に、丸いシールを貼って「1・5・10・11・13・17」「2・6・8・9・14・18」「3・4・7・12・15・16」と書けば、それだけで振り直しのいらない先手決めサイコロになります。数字の見た目はでたらめですが、大きい目が出た人が先手、で公平です。
もう一つ。60面のサイコロは「六十面体(ヘキサコンタヘドロン)」と呼ばれる、ほとんど球に近い形です。ころころとよく転がるので、止まるまで少し待つことになります。振り直しはなくなっても、待ち時間は少し増えるかもしれません。
まとめ
- 「Go First Dice」は、全部の面が違う数字で、同じ目が絶対に出ない先手決めサイコロ
- すごいのは公平さ。何人で振っても勝つ確率が同じで、順番の並び方まで全部同じ確率
- 2個・3個は6面で作れる。4個は12面(1〜48)が必要
- 5個は2023年に60面×5個で解決。最初の相談から15年かかった
- 面の数を最小いくつまで減らせるかは、まだ分かっていない
「もう一回振って」のひとことをなくすために、数学者たちが15年かけました。次にサイコロで先手を決めるとき、少し思い出してみてください。

出典:Wikipedia「Go First Dice」/Live Science「Mathematicians made the world’s fairest dice」(2026年9月5日)/CBC Radio「This new type of dice guarantees no tie when deciding who goes first」。2個・3個の組み合わせの公平性は、筆者が全組み合わせを計算して確認しました。


