役所や学校に出す書類で「機種依存文字は使わないでください」と言われたことはありませんか。だいたい名指しされるのが、①のような丸数字です。
ふだんは何ごともなく表示されるこの文字が、書類で使用を避けるよう求められるのは、なぜでしょうか。理由は40年ほど前にあります。かつて、パソコンメーカーが共通規格にない文字を独自に追加し、メーカーごとに扱いが異なっていた——そのときの食い違いが、いまも残っているからです。

文字は、番号で扱われている
コンピュータは文字を、番号で持っています。「この番号は『あ』」「この番号は『山』」という対応表があって、書くときに文字を番号へ、読むときに番号を文字へ戻しています。
日本語の対応表として広く使われてきたのがJIS X 0208です。ここには漢字も、ひらがなも、記号も並んでいます。ただし、①も㈱も℡も、この表には入っていませんでした。
足りない文字を、各社がそれぞれ足した
各社は、共通規格にない文字を独自に追加しました。ただし、追加した位置は会社ごとに異なっていました。
NECは、当時の規格では未使用だった13区に83文字を足しました。丸数字①〜⑳、ローマ数字Ⅰ〜Ⅹ、№・℡・㈱、それに㌔や㌢のような単位の文字です。いま「機種依存文字」と呼ばれる顔ぶれが、ほぼここに揃っています。
IBMは、115〜119区に388文字を足しました。こちらは人名や地名で使う漢字が中心です。
さらにNECが、IBMの足した文字を89〜92区にも取り込みました。ここで妙なことが起きます。同じ「㈱」が、表の中に2か所ある状態になったのです。人間の目には同じ文字でも、機械にとっては別の番号です。

1993年、Windowsが統合した
この状態を整理したのがマイクロソフトでした。1993年、Windows 3.1日本語版の発売に合わせて、NECとIBMの拡張をひとつにまとめたWindows-31J(CP932)を作り、国際的な登録も行いました。同じ文字が2か所にある場合は、JISの文字を最優先、次にNECの13区、最後にIBM拡張、という優先順位を決めています。
これでWindows-31Jでやり取りする場合は、これらの拡張文字を共通に扱えるようになりました。裏を返せば、当時のMacや、他社のワープロ専用機との間では、まだ通じなかったということです。「機種依存文字」という呼び名は、この時代の記憶です。
Unicodeにも残る変換の違い
その後、世界中の文字を1つの表に集めるUnicodeが広まりました。Unicodeが普及した現在も、古い文字コードとの変換で問題が起きることがあります。その一例が波ダッシュ「〜」です。
Shift_JISのある番号(0x8160)をUnicodeのどれに対応させるかで、マイクロソフト製品はU+FF5E(全角チルダ)、その他の多くはU+301C(波ダッシュ)と、行き先が分かれてしまいました。いまも「〜」と「~」が入れ替わる現象は、ここから来ています。
波ダッシュには、この文字コードの対応関係の問題と、もうひとつ、規格に載せる見本の字形の問題が別々にありました。Unicodeの最終ドラフト(1990年12月)が、JISの波形の上下を逆にして例示してしまい、この字形は長く修正されませんでした。1994年に日本から修正提案が出て、2000年の会議では字形の変更を受け入れない判断がなされ、2014年の提案を経て、Unicode 8.0(2015年)で見本の字形が改められました。ただし、直ったのは見本の字形です。この修正によって、U+301CとU+FF5Eの変換の違いまで解消されたわけではありません。

機種依存文字の指定を確認したい場面(書類・CSV・入稿)
いまのメールやWebで①を使っても、たいていは問題なく表示されます。気をつけたいのは、相手のシステムが決まっている場面です。
古い業務システムへの入力、CSVの取り込み、印刷会社への入稿、役所や学校に出す書類。こういう場面では、受け取る側が昔ながらの文字コードのままだったり、使える文字を制限していたりします。一律に禁止されているわけではないので、提出先が使える文字を指定している場合は、その指定に合わせてください。
出す前に確かめたいときは、機種依存文字チェッカーに文章を貼ってみてください。丸数字や半角カナ、㎡のような合字を拾い出して、安全な書き方への置き換えもできます。もう化けてしまった文字を戻したいときは、文字化けを直すツールのほうです。
まとめ
①や㈱は、かつて共通規格にない拡張文字として使われていました。現在はUnicodeで扱えますが、提出先のシステムによっては使用できないことがあります。
いまは同じ番号を世界で共有しているので、この不便はゆっくり消えていくはずです。それでも、波ダッシュの見本の字形ひとつが直るのに20年以上かかったように、いちど広まった食い違いはしぶといものです。書類やデータを渡すときは、提出先が指定する文字と保存形式を確認してください。
関連: その文字化け、直るかも?(読めない文字が出たときの直し方)/改行コードCRとLFの違い|なぜ2種類ある?
出典: Microsoftコードページ932(Wikipedia)/IBM拡張文字(Wikipedia)/IANA Character Sets(Windows-31J)/Unicode L2/14-198: WAVE DASH の字形修正提案(2014年)/Unicode 8.0.0(Glyph Changes)/UnicodeのWAVE DASH例示字形が、25年ぶりに修正された理由(INTERNET Watch)。2026年9月12日時点。


