
結論:丙午は60年に一度。前回の1966年は、出生数が25%減った
干支(えと)というと、ね・うし・とら……の十二支を思い浮かべますが、正式には「十干(じっかん)」と「十二支」の組み合わせです。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10個、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12個。この二つを順にずらしながら組み合わせると、10と12の最小公倍数である60通りになり、60年でひとまわりします。
「丙午」は、十干の「丙(ひのえ)」と十二支の「午(うま)」が重なる年です。2026年がそれで、ひとつ前は1966年、その前は1906年でした。
1966年に何が起きたか。厚生労働省の人口動態統計によると、日本の出生数は1965年が1,823,697人、1966年が1,360,974人、1967年が1,935,647人。前の年から25%減って、翌年には42%増えています。60年前のこの年だけ、グラフに深い谷ができています。
| 年 | 干支 | 出生数 |
|---|---|---|
| 1965年 | 乙巳(きのとみ) | 1,823,697人 |
| 1966年 | 丙午(ひのえうま) | 1,360,974人 |
| 1967年 | 丁未(ひのとひつじ) | 1,935,647人 |
自分や家族の生まれ年の干支は、西暦・和暦変換ツールに年を入れると出てきます。

なぜ減ったのか——「丙午の女性は気性が激しい」という言い伝え
理由は、迷信です。「丙午の年に生まれた女性は気性が激しく、夫を不幸にする」という言い伝えが江戸時代からあり、1966年にはまだそれを気にする人が多かった。それで、この年に子どもを産むのを避ける人が増えた、と考えられています。
労働政策研究・研修機構の論文(赤林英夫「丙午世代のその後」)によると、もとになった考え方は中国から伝わり、日本で形を変えたもので、江戸時代の「八百屋お七(やおやおしち)」の物語と結びついて広まりました。文献に出てくるのは1662年ごろから。当初は男女ともに言われていたのが、18世紀になると女性だけが嫌われる方向に変わっていったそうです。
言うまでもなく、生まれた年で人の性格が決まることはありません。丙午の「丙」は「火の兄(ひのえ)」、「午」も五行では火にあたるので、火が重なる年ということから「火事が多い」「気が強い」と結びつけられた、という説明がよくされますが、それも後からつけられた理屈です。1966年生まれの人には、何の関係もない話です。
ちなみに、ひとつ前の丙午である1906年(明治39年)の出生数の落ちこみは約7%で、1966年ほど大きくありませんでした。1960年代のほうが減った理由として、当時は避妊の知識が広まって「産む年を選べる」ようになっていたことが挙げられています(同じ論文より)。言い伝えは古いのに、それを実行できる手段が新しかった。皮肉な組み合わせです。
2026年、60年ぶりの丙午
今年がその丙午です。1966年に生まれた人は今年、満60歳の還暦を迎えます。干支がひとまわりして、生まれた年と同じ「丙午」に還ってくる、それが還暦という言葉の意味です(くわしくは還暦はなぜ60歳?——干支がひとまわりして「暦に還る」)。
60年前のような産み控えが今年も起きるのかどうかは、来年発表される2026年の出生数を見れば分かります。言い伝えそのものを知らない世代が増えた今、同じ谷ができるのか、それとも何も起きないのか。統計の答え合わせは、来年です。
ちなみに余談
1966年は、もう一つ別の形で日本の統計に名前を残しています。1989年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数の目安)が1.57となり、それまで最低だった丙午の1966年の1.58を下回った。これが「1.57ショック」と呼ばれ、日本で少子化が問題として意識されるきっかけになりました。迷信で一時的に落ちた年の数字を、迷信なしで下回ってしまった年、という意味です。
もう一つ。丙午にかぎらず、干支の60通りにはそれぞれ名前があり、60年に一度しか来ないので、生まれた年の干支と同じ年は還暦のときにしか巡ってきません。変換ツールの「生年月日・記念日」に誕生日を入れると、還暦がいつか、あと何年かも出ます。
まとめ
- 干支は十干と十二支の組み合わせで60通り。丙午は60年に一度(1906年・1966年・2026年)
- 1966年の出生数は1,360,974人で、前年より25%減、翌年は42%増(厚生労働省の統計)
- 理由は「丙午の女性は気性が激しい」という江戸時代からの迷信。根拠はない
- 1906年の落ちこみは約7%。1966年に大きくなったのは、産む年を選べる時代になっていたため
- 1989年に出生率が1966年の1.58を下回った「1.57ショック」が、少子化対策のきっかけになった
60年に一度の年に、たまたま今いる。統計に深い谷を作った年が、今度はどんな数字を残すのか。来年の発表が答えです。

出典:厚生労働省「平成28年 人口動態統計の年間推計」統計表(第1表 人口動態総覧の年次推移)/赤林英夫「丙午世代のその後」日本労働研究雑誌 2007年12月号(労働政策研究・研修機構)/内閣府経済社会総合研究所 ESRI Research Note No.17「少子化の動向と出生率に関する研究サーベイ」(2011年)


