電源ボタンのマークって、なんの形?(丸が切れているのには理由がある)

電源マーク なんの形? 線が入、丸が切、切れた丸は待機
トット
トット
やあ、トットだよ。パソコンでもテレビでも、電源ボタンにはあの「丸の中に線が立っているマーク」がついているよね。文字は一つも書いてないのに、世界中の人が「ここを押せばいい」とわかる。あのマーク、なんの形だと思う?

結論:線が「入」、丸が「切」

電源まわりの記号は、国際電気標準会議(IEC)という団体の規格「IEC 60417」で決められています。この規格の1973年版(当時の名前はIEC 417)に、電源の記号が登場しました。

基本は二つだけです。まっすぐな線(|)が「入」、丸(○)が「切」。昔の機械のスイッチには英語で「ON」「OFF」と書かれていましたが、言葉は国が変わると通じません。そこで、言葉のかわりにこの二つの記号が使われるようになりました。

この線と丸は「二進数の1と0を絵にしたもの」だと、よく説明されます。コンピュータの中では、電気が流れている状態が1、流れていない状態が0。その1と0がそのままスイッチの記号になった、という話です。とてもきれいな説明なのですが、規格の文書そのものが「1と0が由来」と書いているわけではないようです。なので、ここでは「そう言われている」とお伝えしておきます。

トット
トット
じゃあ、丸の中に線が入っているあのマークは? 1と0がくっついているの?

丸が切れているのには、ちゃんと理由がある

電源ボタンのマークをよく見ると、丸が上のところで切れていて、そのすきまに線が入りこんでいます。これは規格の中で「スタンバイ(待機)」の記号として登録されたものです(IEC 60417の番号5009)。

スタンバイとは、電源が完全に切れてはいないけれど、フルに動いてもいない状態のこと。テレビをリモコンで消したときに、赤い小さなランプだけがついているあの状態です。「入(線)」でも「切(丸)」でもない、その中間。だから記号も、完全に閉じた丸ではなく、線が丸を突き破っている形になっています。

一方で、丸がきちんと閉じていて、その中に線が入っているマークもあります。こちらは「入と切を一つのボタンで切り替える」ための記号です(番号5010)。押すたびに入・切が入れかわる、押しボタン式のスイッチに使われます。

マーク 意味 IEC 60417の番号
⏽ 入(ON) 5007
⭘ 切(OFF) 5008
⏻ スタンバイ(待機)→ 今は「電源」の意味でも 5009
⏼ 一つのボタンで入・切 5010
電源まわりの4つの記号。お使いの端末によっては、マークが表示されないことがあります

「待機」のマークが、いつのまにか「電源」のマークに

ここで一つ、ふしぎなことがあります。パソコンの電源ボタンについているのは、切れた丸のマーク、つまり本来は「スタンバイ」の記号です。でも私たちはあれを「電源ボタン」と呼び、そこを押して起動もするし、長押しして完全に切ることもあります。

実は、規格どおりの使い分けが、使う側にはほとんど伝わっていませんでした。同じマークなのに、機械によって「待機になる」「完全に切れる」「つく」と挙動がばらばらで、押してみないとわからない。そこで2004年、アメリカの電気電子学会(IEEE)が「IEEE 1621」という別の規格を出しました。内容は大きく二つで、切れた丸のマークは「電源」全般の記号として扱うこと、そしてスリープ(省電力)には三日月のマーク(⏾)を使うこと。マークと実際の動きのズレを、規格の側から追いかけて直したわけです。

この規格をまとめたのは、アメリカのローレンス・バークレー国立研究所の研究者たち。待機中の電力のむだが積み重なると大きな額になる、という省エネの問題意識が出発点だったそうです。電源マークの話が、じつは電気代の話とつながっているのは面白いところです。

トット
トット
つまり、いま電源ボタンについているのは「もともと待機の記号だったけど、みんなが電源として使うので、正式に電源の記号になった」マークなんだ。

ちなみに余談

この電源マーク、2016年からは「文字」としても打てるようになりました。世界中の文字を管理しているUnicodeという仕組みに、電源まわりの記号がまとめて追加されたのです(Unicode 9.0)。⏻ ⏼ ⏽ ⭘ ⏾ の5つで、この記事の表に出てきたマークも、画像ではなく文字として書いています。

追加を提案したのは、イギリスのエンジニアのテレンス・イーデンさんら数人。説明書やホームページで電源ボタンの話をするのに、そのマークを文字で書けないのは不便だ、というところから始まった活動で、2015年に採用が決まりました。もし手元の端末でこの記事の表のマークがちゃんと見えていたら、それはお使いの機械のフォントがこの文字に対応している、ということです。

アイコンの由来の話は、保存アイコンの謎(あの四角いマーク、なんの絵?)でも書きました。あわせてどうぞ。

まとめ

  • 電源の記号は1973年の国際規格(IEC 417、いまのIEC 60417)で決まった
  • 線(|)が「入」、丸(○)が「切」。二進数の1と0を絵にしたもの、とよく説明される
  • 丸が切れて線が入りこんだマークは、本来は「スタンバイ(待機)」の記号
  • 2004年のIEEE 1621で、そのマークを「電源」全般に使い、スリープには三日月を使うことになった
  • 2016年からはUnicodeの文字(⏻など)として打てる

毎日押しているボタンのマーク一つにも、半世紀ぶんの事情が詰まっています。次に電源を入れるとき、丸の切れ目をちょっと見てみてください。

トット
トット
線が入って、丸が切って、その間が待機。覚えると、家の中の機械ぜんぶが少しだけ読めるようになるよ。

出典:Wikipedia – Power symbol/IEC 60417 – 5009 Stand-by(ISO/IEC Online Browsing Platform)/IEEE 1621-2004/Origin Trace – The History of the Power Symbol

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